雪の思い出

1/10
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ

雪の思い出

雪の思い出といえばそう。 あれは高校2年の冬休みの事だった。 俺、千夜保(せんや たもつ)が、親友の鈴木航(すずき わたる)の提案に乗ったのが発端だった。 一応1年先輩の山村凌(やまむら りょう)の専門学校の合格祝いを兼ねて、3人で温泉旅館に泊まりに行く事になった。 それだけなら別に大したことは無いのだが、旅館の近くにゲレンデの在る雪山があると聞き、スキーをしたかった俺は鈴木の話に乗る事にした。 ところが。 「なかなか上手く滑れませんね…」 「うわわわ!保ー!助けてー!」 鈴木も山村もスキー初心者だった。 鈴木は、元々運動が苦手なのは知っていたが、山村もさっきからスノボに乗っては雪まみれになって転倒し、又、スノボに乗り…の繰り返しだ。 俺は上級者コースに行きたいのを我慢し、初心者コースで2人の近くにパラレルターンで華麗に雪を舞わせて止まった。 「鈴木、初めはボーゲンで止まれ。俺、そろそろ上級者コースに行っても良いか?」 「僕1人ならそれでも構いませんが、山村先輩が千夜くんに着いて行きかねないので駄目です」 ゴーグルを上げスキーマニュアルを読んでいた鈴木からダメ出しされて、なかなか上級者コースに行けねー。 雪山じゃなきゃ山村を撒き俺1人で上級者コースを楽しみたいところだが、もし天気が変わって山村が遭難したら目も当てられねーのは確かだ。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!