12人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
⑥
「赤芝さんに。あの磬子を壊してもらうか、私か美沙ちゃんが壊すの」
「そっか、でもそれって器物損壊罪じゃない?」
「罪は私が被るから。一刻も早く、人を狂わせるあの磬子を壊さないと、あの男はもっとひどいことをするかもしれない」
「ネットであの音を拡散させるとか!」
「それこそ、どうにもならなくなる」
「そうだよね。ここはやっぱり赤芝紅華の力を借りるしかないか……。でも、彼女引き受けてくれるかな。美加ちゃん彼女と話せる?」
「うん。多分彼女は喜んで引き受けてくれると思う。彼女にとって京山との対決はワクワクすることだと思うよ」
その日の夜。天ノ使美加は、隣町の大学に通っている赤芝紅華とコンタクトをとった。紅華は、計画を聞いて大いに喜んだ。
翌日、午前10時。天ノ使美加、日向美沙、赤芝紅華は駅で合流した。
赤芝紅華は、真っ赤なダッフルコートを着て現れた。ロングヘアーにニット帽、ボトムスはジーンズ。下がり気味の目じり、穏やかな顔つきで、化粧っ気はない。目を細めてほほ笑む癒し系の顔に、誰もが騙される。赤芝紅華は良い人だと。
「天ノ使さん、日向さんお久しぶりですわ」
ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべる紅華。
「あ、赤芝さん。お、お久しぶりです」
明らかに身構えて緊張する美沙。
「今日は、わざわざありがとうございます。作戦は昨日お話しした通りです」 美加は、気負うことなく紅華と同じようにほほ笑む。
「京山という男、許せませんわね。人の心を弄んで喜ぶなんて」
そう言って、紅華は腕を組む。
「とにかく、その男に占いをしてもらって、磬子をブチ壊したらいいのね? まかせてくださいな。私、今からワクワクしていますの。早く行きましょう!」
ソワソワと体を揺する紅華。
「あの、相手は小柄な中年ですが、油断ならない男ですから気をつけて下さいね」
美加は、自らが京山の攻撃を受けているので用心深くなっていた。
3人は、京山邸の門前に立った。前もって一切連絡はしていない。玄関は開いていた。京山は在宅している。
「こんにちは、京山さん。天ノ使美加です。昨日のお詫びに参りました」
「おお、昨日の方。それはどうも、わざわざ」
しらじらしく京山が現れた。昨日と同じ姿だ。
最初のコメントを投稿しよう!