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⑧
「そうですか、それはどのような罪ですか?」
京山は、紅華の顔を覗き込んでくる。
顔を見合わせる2人。
「このような罪ですわ」
紅華は、笑いながら立ちあがり、磬子を頭上に持ちあげる。
「わー! 待って待って! それを壊さないで! あんたは、この音を聞いて何ともないのか?」
「何のことですの、ゴーンとお寺の鐘が鳴っただけですわ。ちょっとうるさかったけど」
「おお、あんたも私と同じ超能力者か。どうだ一緒に組んでもっと面白いことをしないか」
「え? 面白いこと?」
京山の『もっと面白いことをしないか』と言う言葉に食指が動く紅華。磬子を頭上に掲げたまま動きが止まる。
「だめー! 赤芝さん! 早くそれを壊して!」
美加は、頭を左右に振りながら叫ぶ。
「なあ、あんたとなら金儲けもできそうだ」
京山のその言葉が命取りだった。
「はあ? 私、お金には全然興味ないので」
紅華は、躊躇せず磬子を床に叩きつけた。放射状に砕け散る黒い破片。
「あああああ! なんてことを!」
床に這いつくばって狼狽える京山を見下ろして、歓声をあげる紅華。
「きゃははははは。やっぱりこっちの方が面白かったよ! きゃはははは」
床を這いながらオロオロする男とそれを見て高笑いをする女。
美加には、シュールで、不気味な光景に見えた。
やがて京山は動かなくなり、放心状態となった。
「ちょうど30分経ちましたね。じゃあ三千円置いていきますわね。では、ご機嫌麗しゅう!」
紅華は、手を振って部屋を後にする。美加と美沙も彼女に続いた。
3人は、消え残っている昨日の雪を見ながら駅にもどった。
「ああ、面白かった。天ノ使さん、日向さん今日はありがとう。楽しかったですわ」
「いえ、こちらこそ急でしたが、大変なお願いをきいてもらって感謝しています」
美加の正直な気持ちだった。
「また、面白いことする時は連絡して下さいね。ああそれから、これ戦利品ですの」
紅華は、磬子の破片を美加に手渡す。
「あ、これって……。クリスタルじゃない。プラスチックです」
「京山って男、大嘘つきだったんだ」
美沙が、破片を眺めまわす。
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