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「そうですか、それはどのような罪ですか?」  京山(きょうやま)は、紅華(べにか)の顔を覗き込んでくる。  顔を見合わせる2人。 「このような罪ですわ」  紅華は、笑いながら立ちあがり、磬子(けいす)を頭上に持ちあげる。 「わー! 待って待って! それを壊さないで! あんたは、この音を聞いて何ともないのか?」 「何のことですの、ゴーンとお寺の鐘が鳴っただけですわ。ちょっとうるさかったけど」 「おお、あんたも私と同じ超能力者か。どうだ一緒に組んでもっと面白いことをしないか」 「え? 面白いこと?」  京山の『もっと面白いことをしないか』と言う言葉に食指(しょくし)が動く紅華。磬子を頭上に(かか)げたまま動きが止まる。 「だめー! 赤芝(あかしば)さん! 早くそれを壊して!」  美加(みか)は、頭を左右に振りながら叫ぶ。 「なあ、あんたとなら金儲けもできそうだ」  京山のその言葉が命取りだった。 「はあ? 私、お金には全然興味ないので」  紅華は、躊躇(ちゅうちょ)せず磬子を床に叩きつけた。放射状に砕け散る黒い破片。 「あああああ! なんてことを!」  床に這いつくばって狼狽(うろた)える京山を見下ろして、歓声をあげる紅華。 「きゃははははは。やっぱりこっちの方が面白かったよ! きゃはははは」  床を這いながらオロオロする男とそれを見て高笑いをする女。  美加には、シュールで、不気味な光景に見えた。  やがて京山は動かなくなり、放心状態となった。 「ちょうど30分経ちましたね。じゃあ三千円置いていきますわね。では、ご機嫌(きげん)(うるわ)しゅう!」  紅華は、手を振って部屋を後にする。美加と美沙も彼女に続いた。  3人は、消え残っている昨日の雪を見ながら駅にもどった。 「ああ、面白かった。天ノ使さん、日向さん今日はありがとう。楽しかったですわ」 「いえ、こちらこそ急でしたが、大変なお願いをきいてもらって感謝しています」  美加の正直な気持ちだった。 「また、面白いことする時は連絡して下さいね。ああそれから、これ戦利品ですの」   紅華は、磬子の破片を美加に手渡す。 「あ、これって……。クリスタルじゃない。プラスチックです」 「京山って男、大嘘つきだったんだ」  美沙が、破片を眺めまわす。
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