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「吹雪、もう少しで止むみたいだ。」
俺たち四人は小屋の中で丸まりながらじっとしていた。
「一時はどうなることかと思ったが、なんとかなりそうだな!」赤いダウンを着た佐藤は元気を取り戻しそう言った。
「ああ、足の感覚も段々戻ってきたよ。毛糸の靴下って偉大だな。」大西も元気そうだ。
「水があって助かったよ。生き返ったー。」長嶋もかなり顔色が良くなった。
皆それぞれ冷えの対処ができ、ずいぶん余裕ができた。だけど・・・。
「手袋とかないの?手の震えが止まらないんだけど・・・。」俺だけ手が冷えたまんまで納得がいかず、不平を漏らす。
「そこに手を入れとけよ。まだ暖かいはずだ。状況にもよるが、二十~三十分ほどは三十六度ぐらいが保たれるはずだ。常識のない佐藤様からのありがたい情報だぞー。」
「根に持ってたのか。ごめんな。」大西が申し訳なさそうにする。そしてこちらを振り返り、「これ使えよ。」と包丁を渡してくれる。
「切り開くのに必要だろ?」
「感触が嫌いなんだよなー。あれ?これ血がこびりついてるじゃん。確かこの包丁ってあの男のリュックに入ってたものだよな。それって・・・。」
「まあそういうことだな。あの男は殺人者だった。それだけだな。ところで手の震えは収まったか?」
ぐにゃりという感覚に嫌悪感を覚えながらも手を入れていくと、ほのかな暖かさに手が溶けていくようだった。震えがようやく収まった。
生きていくために必要なことだったんだ。あなたのおかげで俺たちは今生きている、ありがとう、と名前も知らぬ男に感謝の気持ちを心の中で述べる。
吹雪はすっかり止んだ。あとは俺たちの目的を果たすだけだ。当初と予定が変わったが、大丈夫。
埋める死体が一体から二体に変わっただけさ。
ーーーfinーーー
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