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「寒い!」
そう叫んで入ってきた男は、人がいたことに驚いたようで、少しの間固まっていた。
「あのー、ドア閉めてもらえます?」
「あっ、すみません。」
男はドアを閉めると部屋の隅に陣取った。
「いやー本当に寒いですね。吹雪になると思いませんでしたよ。あ、皆さんはどうしてこの山に?あまり人がいるのを見たことがないのだけど。」
「まぁ、色々ありまして。」大西が答える。
「あなたは何しにこの山へ来たんですか?」俺は気になって聞いてみた。人が寄り付かない山になぜいるのか。
「いやー、この山の上に古い神社があるんですよ。そこに行きたくて来たんですけどね。こんな天気じゃたまったもんじゃないですよ。」
「そうなんですね。ところでここに来るまでに助けを呼んだりしました?」
「えっ、あーいやもうすぐ吹雪が止む予定だから呼んでないよ?なんで?もしかして呼んじゃったの?」男が少し狼狽える。
「呼んでないですよ。でも本当に限界になったら呼びます。ま、呼ばなくても何とかなりそうですけどね。」と大西が言う。
「寒いもんね。でももう吹雪止むと思うし助けはいらないと思うな。それより吹雪が過ぎ去るまで暇だよねー。何して過ごそうか。そういえばドアの横に置いてあった大きなバッグって何が入ってるの?」男は防寒がしっかりしていて余裕そうだ。限界が近い俺からしたら少しイライラするテンションだ。
「ねぇ、バッグの中身見ていい?」男は好奇心に満ちた目でこっちを見てくる。だが、そのバッグはまずい。
「だm・・・」
「いいですよ。」俺の声が大西に遮られる。
何考えてるんだ。あのバッグを見られるのはまずい。非常にまずい。なのになんで・・・。
大西の顔を見ると、そこには穏やかな、しかし奥底に冷徹さを秘めているような、そんな表情があった。
「では遠慮なく、オープン!!」
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