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昼過ぎ。アリーナは伯爵令嬢主催の交流会という名のお茶会に招待された。
話題はやはりダメアンのこと。
参加した令嬢たちは揃ってアリーナの心配をする。
「アリーナ様、よく婚約者をしていられますわね。こう言ってはなんですが、殿下は、その……ね?」
「ワタクシも先日の舞踏会でご挨拶されて、困ってしまいましたわ」
みんな、言葉尻を濁して苦笑いしている。
王族が一番偉いから、間違っても、王子に胸を揉まれたなんて口に出せない。
「大丈夫ですわ。私は自分を人身御供と思っております。貴族に生まれた以上は愛のない結婚もあるでしょう。私がこの位置に収まることで他の令嬢が苦しい思いをしなくて済むのであれば」
「なんという悲壮な覚悟を……」
令嬢たちがハンカチを濡らすほど、引き受けたくないお役目なのである。
令嬢たちの間で、臆せず王子を撃ちまくるアリーナは英雄になっていた。
「とある島国では、年末に一〇八の鐘を打つと煩悩が消え去ると言われているそうです。殿下にも一〇八発撃ち込めば、あるいは真人間になるかもしれません」
アリーナはお茶を飲みつつ答える。
翌日、后教育を受けるため登城したアリーナの前を、ダミアンが侍女の尻を追って横切っていく。
「昨日の今日で懲りていませんのね……」
魔導銃の弾丸は持ち主の魔力。
アリーナは肩を落としながら、弾丸を装填する。
「煩悩まみれの脳みそを浄化して差し上げますわ!!」
両手に銃を構え連射する。
魔力切れにならない程度に撃ちまくり、ダミアンは三十分、床とお友達になった。
ダミアンは動けない間、父王にこんこんと説教され、母からも嘆かれる。
説教されても女性の尻を追ってしまうのは、感心するレベルだ。
結婚すれば落ち着くかと思えばそうでもなく、数年後に娘が生まれても色ボケは変わらない。
女性たちのハートを守るため、ダミアンの世話係は今、下男と執事で固められている。
娘も十歳になる頃には「色ボケ父は恥」と学び、魔導火炎放射器を携帯するようになった。
舞踏会でも挨拶がわりにお触りをするので、そのたびにアリーナの銃が轟音を立て、娘の火炎放射器が炎を吹く。
「粛清しますわ!!!」
「ぐぎゃぁん!」
今日もカルスタン城にダミアンの悲鳴が響く。
END
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