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靴と
先日、妻と妻の母親と私の三人で真冬の寒い昼間、ショッピングセンターへ行ったときのこと──。
「悪いわねえ、連れてきてもらって」
「いえいえ。お義母さん、お安いご用です。せっかく自動車なんですし」
「そうそう。高齢だからお母さん、近所たって歩いてくるにはけっこう距離あるし、もう自転車はフラフラして危なっかしいし、ワタシたちが遊びにきたときくらい、いっしょに自転車でくればいいじゃあない」
そんな会話を交わしながら、ゆっくり車をバックさせる。
表側にあたる駅前方面の、自転車専用の広い一階駐輪場と、スロープを登って三階・四階の立体駐車場にしかアクセスできない南側ではなく、青空パーキングもある北側へ停めた。こちらのほうが国道から入場できるし、うまくいけば今回みたいに首尾よく館の出入り口により近い場所へ駐車できて、とても便利だからだ。
「何これ?」
妻が急に声をあげた。
停車時には私の視界に入らず気づかなかったのだが、車を降りてから妻の驚嘆したわけがわかった。
「ヘンなの」
自分たちの車を停めたいちばん端の駐車スペースの後ろ、車止めと柱のあいだのあたりに、ぽつねんと茶色いブーツが一足ならべて置いてあったのだ。
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