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ラティアーナは首から下げていた聖女の証である月白の首飾りを自らはずし、アイニスへと手渡した。
アイニスはそれをひったくるかのようにして受け取ると、キンバリーへと手渡す。彼は穏やかな笑みを浮かべてそれを手にし、アイニスの首にかける。
その一連の流れを、ラティアーナはしっかりと見つめていた。
アイニスの首には、しっかりと月白の首飾りが納まっている。
「わたくしは、聖女だからキンバリー殿下と婚約いたしました。ですが、婚約を破棄された今、わたくしが聖女と名乗るのもおこがましいというもの。ですからアイニス様。これからはキンバリー殿下の婚約者として彼を支え、聖女としてこの国を豊かな未来へと導いてください」
凛とした声でそう告げた彼女は、玉座の国王に身体を向ける。
そこにいる誰もが、彼女から目を離せない。
「国王陛下。即位二十周年おめでとうございます。私的なことでお騒がせして申し訳ありませんでした」
まるで手本のような淑女の礼をした彼女は、くるりと向きを変え、会場の外へと向かって歩き出した。
堂々としたその姿は、彼らの目にも焼き付いている。
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