1.だから彼女と別れた

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 残念ながらキンバリーは、その魅力に気づいていない。  そんな彼を愚かだと思いならも憐れんだ。だが、気づかぬことに安堵もした。  ラティアーナの魅力は、自分さえ知っていればいいという優越感によるものかもしれない。  ラティアーナは神殿で暮らしていたが、それはキンバリーと婚約した後もかわらなかった。  必要に応じて、王城へ足を運ぶ。  そしてそのときだけが、サディアスが彼女と会える時間でもあった。  ある日サディアスが、教師の目を盗んで庭園で休んでいると、風にのって女性の歌声が聞こえてきた。  青空が広がっており、穏やかな風が吹いている。  だからサディアスは外へと逃げてきた。澄み切った空を見ていたら、部屋に閉じこもって勉強しているのが馬鹿らしくなったのだ。  課題は終わらせてあるし、何も問題はないだろう。何もせずに、あの部屋でただ時間を過ごすほうが無駄であると、勝手に判断した。  庭園の噴水の脇にある長椅子に寝転んで、空を流れる雲を眺めていると、自分という存在がちっぽけに思えてくる。  そんなことをぼんやりと考えていたときだった。 (……?!)
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