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残念ながらキンバリーは、その魅力に気づいていない。
そんな彼を愚かだと思いならも憐れんだ。だが、気づかぬことに安堵もした。
ラティアーナの魅力は、自分さえ知っていればいいという優越感によるものかもしれない。
ラティアーナは神殿で暮らしていたが、それはキンバリーと婚約した後もかわらなかった。
必要に応じて、王城へ足を運ぶ。
そしてそのときだけが、サディアスが彼女と会える時間でもあった。
ある日サディアスが、教師の目を盗んで庭園で休んでいると、風にのって女性の歌声が聞こえてきた。
青空が広がっており、穏やかな風が吹いている。
だからサディアスは外へと逃げてきた。澄み切った空を見ていたら、部屋に閉じこもって勉強しているのが馬鹿らしくなったのだ。
課題は終わらせてあるし、何も問題はないだろう。何もせずに、あの部屋でただ時間を過ごすほうが無駄であると、勝手に判断した。
庭園の噴水の脇にある長椅子に寝転んで、空を流れる雲を眺めていると、自分という存在がちっぽけに思えてくる。
そんなことをぼんやりと考えていたときだった。
(……?!)
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