最果ての渓流

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最果ての渓流

 ようやく教室に着いた。  窓から外を見ると、学生がぞろぞろととうこうしている。  ククミはどうやら二番乗りらしい。  あと五分で講義が始まる。  大学の近くに住んでいなければ余程苦しかっただろう。 「はあ、なんとか間に合った。もう一度寝てたら、急いで出でこなければきっと遅刻していたわね」  席に座る。  ……教室には六人しかいない。  受講人数としては四十人ほどいた気がするが。  時間は。 「九時超えてる。あれ、先生も少し遅れてるのかな」  そのときだった。  スマホが光る。 『本日積雪のため休講とします。補講日については後日学務と相談して決めます。そろそろ小テストも近いので本日は復習に当ててください』  ククミは席を立った。 「これで今日の講義、全部休講だ」  近くの席の学生はバッグを持つと頭を掻きながら出ていった。  その気持ちはよく分かるものだ。  バッグの小さなポケットから透けるカードが見えるならなおさら。   「私も帰ろうかな。優雅な朝を再開する、みたいな」  後日、一時間目の講義は来週の土曜日、もう一方はテスト直前の土曜日に補講をすることが決まった。雪とはなかなか厄介である。
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