始まりの村(1)

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始まりの村(1)

 ククミ、大学二年生。  起床一回目、時刻は深夜二時。少なくとも今から活動できる時間帯ではない。  ただ喉が乾燥していた。  布団から出る、用を足す、水を飲む、改めて寝る、これを決行するというのは目を覚ましてすぐに確定した。問題があるとすれば、十二月初旬はすでに強者であったということだ。ククミは上半身を起こして掛け布団を足元に寄せると違和感に気づいた。 「え、嘘。なにこれ、寒い! 待って。うーんと、この辺に。今は二時十七分で、深夜じゃん。って、室温五度? うわああ、寒い、ぶるぶるする。はあ、ついに冬本番?」  部屋が十分暗いからか、ククミはさらなる困難には気づいていない。  さて。 布団から飛び出したなら、タイムアタック開始である。  ククミは一人暮らしでマンションの五階に住んでいる。  隣人や下の階の住人に迷惑かけるわけにはいかない。踵を上げてつま先をカマキリの鎌のように尖らせながら進んでいく。  表情筋が強張っているのは寝起きかつ寒いから。瞼も眼球もセロハンテープで固定されたように張ってしまって動かない。 用を足すと、一段と身体が冷えた。  水をコップに注いで一気飲みする。さらに身体が冷えた。 「急に冷えてしまって。エアコンで暖房をつけると乾燥するから。うーむ、布団でなんとかするしかない。寒い!」  ククミは布団を深く被る。が、足が出てしまって仕切り直しだ。掛け布団でミノムシのように巻き付ける。あとは体温でましになるかどうか。室温五度、布団の外は危険らしい。  二時三十二分、どうやらもう少し温まるのを待つべきだろう。 「寒いの苦手なんだけど。はあ、寝ちゃお。ってまだぶるぶるしちゃうわ」
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