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ある年。
それはちょうど小学校に入学してから三年ほどっ立った頃。これが彼にとって最初で最後と”思われた”人生の分け目と言えるルート、つまり大きな影響を与える波が訪れた。
入学したばかりの頃は皆同じというような雰囲気で性別が曖昧な彼でも誰も変には思わなかった。
しかし、それが三年生ほどとなると、皆が人の性別に敏感な年頃になり始める、『第二発育急進期』いわば『思春期』に近しいモノとなるため、体育の授業などでは、男所で別れて着替えるのに対し、着替えるときだけ個別な彼を、皆怪しみ、避け、気持ち悪がり、やはりまともな対応とは言えなくなっていた。
ある時、同じクラスの少年Aが言う。それは、みんなでサッカーの練習をしているときだった。A君とペアを組んだ彼は、ボールを持ってきて、A君に『パス練習しようよ!』と声をかけた。
すると、
「お前さ、なんかきしょいんだよね。」
「え…?」
「『え?』じゃなくて。自覚してねぇの? みんな言ってんぜ。お前が『性別わかんないってふりして、先生によく扱ってもらおう』としてんの。」
「…」
「何も言えねぇんじゃん。ダサ、俺、お前なんかと組みたくねぇから。そんなにぶ
ぶりっ子したいんなら、もうちょ可愛くしたら? あ、そっか。お前男だっけ?
いや、女か? ハハハハッ!」
そう言って、彼は他の誰かとサッカーを楽しんでいた。
このときの彼の感情は、冷めきっていた。
―僕が何をしたんだろう、いや、そんなのどうでも良いな。
もう…嫌だな。僕だってね、本当は気づいてたんだよ、そんなこと。
でも、信じたかったんだ。信じたかったのに…。
人間は嫌いだ。すぐ…裏切るから。―
それでも、何故か彼の瞳には、熱く、熱く熱を帯び、金剛石のような輝きのある雫が、静かに、頬を伝っていた。そこから彼は、どんどん人間が嫌いになった。それは、養父達に対しても少しだけ思ってしまう。
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