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「そうこなくっちゃねぇ!」
彼が思いもよらず、急に子供っぽい口調と声で喋りだすので、
体をビクつかせてしまう。
彼は笑みを浮かべながら指を『パチン』と鳴らした。すると彼の羽が一つ一つと舞い、台風の渦のようにして彼らを覆った。
そして、その場から消え去ったのだ、一枚の”黒い羽根”を残して。
彼が連れて行ったのはこの世、つまり俗に言う”人間界”ではない”異世界”の天高く上で、影晴はもう”元の世”に帰ることは無いだろうと考えた。
常人ならばこの湯な急すぎる展開を運命とは受け止め難いだろう。そして『新居なのに』だとか『両親に会いたい』だとか『友達どうしてるかな、心配されてるかも』などと考えるだろうが、影晴はそんな事考えない。
そもそも誰にもそうは思われていないだろうと考えているため、はっきり言って、誰も自分を知らないこの世界に自由をかんじる始末だ。
まぁ、本当のところは常人こそ何も考えられなくなってしまうのだろうが。
とても早く走り、肌に冷たく感じる空気―そんな事を考えながらも、一番彼が気になっているのがいつまでこの男…いや、鳥人間と称そうか。この”鳥人間”にお姫様抱っこをされなくてはならないのかということだった。
いくら名家の出身だからといって、彼はそのようにされたことはない、この一度も。
それは、彼が男として生きてきたというのもあるのだろうが、彼の両親に『今日ね、〇〇さんが男の子と手つないでたんだ』と話した時などに『そ、そんな破廉恥な事してはなりません!』と発狂していたからだ。
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