6人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、結局の所はあまりそのような言いつけに従っていないのだが。
まぁ、そんな無駄話は置いといて。
彼に抱きかかえられながら、横に首を少し動かし、下の様子を見ると―そこには、このままズルっと滑ればふわりと落ちてしまいそうな雰囲気のある半透明な薄い雲と、その隙間からわずかに散らばって見える小さな明かりだった。
「あそこには…何があるんですか?」
「お前の送られる”奴隷市場”だ。安心しろ、お前がここに長居することは決して無い」
「…?」
影晴は彼の言っていることがあまり理解できなかったが、雲の層を付きのけ視界が晴れると、どういうことかを瞬時に理解できた。
それは、痛々しい姿をしている―で”奴隷達”だった。
彼はその惨劇を目の当たりにし、目を見開いた。彼等の様子は様々に痛めつけられ、自分までもが痛みを感じるを程だった。
その最も目についたものが、下記のことである。
壁に手首を釘で刺され、足は鎖で巻きつけられているもの。
顔に布袋をかぶせて首を絞められ、数千ボルトもあるだろう電流の届く鎖を体中に巻きつけられているもの。
両足に重りのついた鎖をつけ、打撲や切り傷、やけどなどと痛めつけられているもの。
このようなことをされているもの全員が、血を吐き肉を出し、皮のはがれている状態である。もとは白かっただろう彼等の服も、真っ赤な鮮血に染められているのだった。
あまりにも…というその様子に、影晴は目を背けた。
最初のコメントを投稿しよう!