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「どうした?」
「か、彼等はどうしてここに?」
「この世、魔界の犯罪者や、違反を犯したものなど様々だ。そういう奴らをよく買ってくれるから…という事で彼奴等はここにいるのだ。
始末しようのない悪党ではなく、使える力のある悪党がここにいる。そういう奴らを媒介するのが奴隷市場だ。
つまり、”闇業者”ってことだ。
だから言っただろう?『お前程の上玉はいない』と」
―ああ、それで選ばれたのか―と、影晴はすべてを理解した。
まず、”条件の通過”というのは、彼(影晴)自身の気持ちと状況である。
影晴は、もう人間との関わりに対して縁を切っている…そのようなものだった。そのため、売ったりしても構わないようなものということだろう。
そして、人間ということでとてもきれいな体とよい力を持っている。これならば、どう甚振ることも出来よう。
影晴は、大きく溜息を吐いた。自分が、少しでも”誰かを信じようとした”事をとても恥じた。しかも、相手は悪魔だと言うのに。なんて不甲斐ないんだろう、と数分前の自分が憎らしい。
そうやって憂鬱な気分になっていると、なぜか鳥人間が『はぁ』とため息を付いた。
「考えすぎだよ、君は。やっぱり…何でこんなに―」
そう小さく独り言を零すと、影晴がかれのことをじっと見ているのに築き、すぐに言葉を呑み込んでいた。
(考えすぎって? そんな酷いことは考えていないってことかな…)
彼の言ったことの深部を考えていると、彼は気を取り直すように深呼吸をし、
「よし、じゃあ座って!」
と、再び子供っぽい声を出して言う。
「はい?」
その急で強引な動きに、素っ頓狂な声を出してしまう。
彼は影晴に有無を言わさず、彼の肩に力を入れ、無理やり押し倒すようにして座らせるのだ。
そして両手を鎖で結びつけると、再び『パチン』と指を鳴らして、影晴の入った檻を覆う大きな結界を張り、それはやがて固く太い鉄の柵へと化した。
「え、あ、あの!」
「五分程…かな。それぐらい待てば客は来るだろう」
彼はそうつぶやくと、指を『パチン』と鳴らして美しくお辞儀をする。
そして、瞬きのする間に、彼は一枚の羽を残して去ったのだ。
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