ふたりのツレ

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ふたりのツレ

   私は図書館スタッフになった。以前は精神科で看護師として働いていたが、統合失調症にかかって医師から看護師はもう辞めときなさいと言われて、何回もハローワークで仕事を紹介された。駄目で元々で挑んだ面接。何にもわからなったが、子供が好きと言ったのがよかったのか、見事採用された。  児童室では、かわいい子供達がキャッキャッいい、たまに本を探してほしいと話しかけられる。ココは天国ですか?  何も資格を持っていない私に与えられる仕事は、配架(本を元あった場所に戻す仕事)及び雑用なのですが、図書館の仕事から、学び得ることは多い。たとえば、表の世界のことならたいていの本はそろう。感覚で言えば荒いGoogle検索をしている感じだ。    追々、話していくとして、私には「イド」と「無意識」という不思議な存在が付きまとっていた。  はじめに気がついたのは、自動車のガラスごしに外の景色を眺めていた時だった。唐突に知り合いの女性の性的な、いやらしい妄想をしだしたのだ。脈絡がないのである。頭の中でお前はイドか?と聞くとそうだと答えた。コレには自尊心があるのか、最終的にウソを言ったりすることはない。  妄想の正体はイドだったのだ。イドは、私が苦しむエロい妄想を見せていただけではない。仕事で配架していると、本を本棚に戻すとき、私は本棚に戻す場所は正しいのかと迷うときがある。しょっちゅう迷うので、これをどうにかして効率よく仕事ができないかと考えたのだが、イドの仕業だった。今のところ対策はない。看護師の時は、カルテの記事記載から、静脈注射を刺す直前、まだまだあると思うが、イドが邪魔していたのだった。  「無意識」については、私がどこかで見聞きしたこともない、知っているわけのないことやアイデアを教えてくれる。教えてくれたことに対して「ありがとう」を頭で素早く念じないと注意をうける。  これは、私が仏教の癒しに興味があるのでやっていることで、無意識さんにも、続けるようにと言われていることですが、近所のお寺に月に一回御供え物をしろと言われています。スーパーマーケットで買った500円ぐらいのお菓子です。ここまで聞くと神様かなんかかと思うかもしれないが、この方が言うには、私の先祖の誰からしいです。スーパーマーケットでないと駄目とか、御供え物と同じものを、私が買って食べては駄目というルールがありますが、先月は懐に余裕がなかったので、御供え物は休ませても、もらえるご先祖様です。  自分でコイツを呼ぶ時は大抵「お前だろ!」からはじまる。コイツの仕業とわかってからも、ちょこちょこ妄想をするのだが、胸くそ悪い妄想も、正確に言うと自分でしているのだが、誰かにさせられていると思うと以前のように腹が立たない。また、妄想させられることも少なくなった気もする。  眠って見る夢もコイツが原因なのだが、コイツがこんな悪さをするのには、なにかしらのルールがあるような気がしてならない。たぶん、子作りを催促されている気がする。  ある日ドラッグストアーに冷凍食品の唐揚げを買いに行ったのだが、突然、シュークリームが食べたいと思い、無意識さんが呆れた声で「好きにしろ!」と言われたので、反省し、お前か?と思い、缶コーヒーで我慢した。無意識さんとしては、何も買わせたくはなかったらしい。  読んでくれている人には、お前ムチャし過ぎだと思われるかもしれないが、ジョギングしていると脇腹が痛くなることがあるじゃないですか、このあいだジョギングしてたら左肩が痛くなりまして、これもイドの仕業だったようです。私事ですが、体力は人並みより多くつけておきたいのです。  着想のほとんどは、無意識さんの手柄なのだが、少しは自分で気がついたこともあるようで、「もっと自分に自信をもて!」と注意をうけた。  透視能力について言ってないことがまだあった。過去から今の私をのぞき、言いたいことを言っている透視能力者の声がするようなことがあった。そういう病的体験?(医師はオブラートに包んだように、させられ体験と言う)に、どうやって対処すればいいか、ズバリ無視するしかない!そこらへん、今かかっている病院の看護師は考えてくれたようで、私とは最小限のことしか話さないでいてくれた。しかし、ひとりぼっちはさみしかった。  カンフーを夜遅くまで練習し、アフターで談義をする。これがいつものながれだったのだが、いつも頷いてばかりの私が、話の流れで結晶化、摩擦、爆発を繰り返すと言ってみたら、他のメンバーも、同じような話題をするようになった。師やメンバーに思考を盗まれているのではないかと言う状態になってしまったのだ。なんてことはない。似た者同士の集まりなので、考えること、嗜好が似ているのだと思う。もちろん師やメンバーの中にも透視能力を持っている人もいた。聞く立場から聞かれる立場になったのだが、これがとても気持ちわるいのだ。嗜好が似ている。進歩している。しようとしているのは自分だけではないと肝に命じておくと良いと思う。 若い頃はこんなことはなかった気がする。皮膚の表面ではなく、肉の中が痒い。皮膚を引っ掻くまでやめられない。今、気がついたのだが、私はアレルギー疾患を持っているのではないか、若い頃は、ストレスと思わなかったことをストレスと感じるようになったのではないかと思う。痒いのを我慢するとき、どうにか痒いのが治まらないかと葛藤する。アレルギーの痒みは、引っ掻けばいいのではないか、冷やしても無駄無駄痒みをどうにかできるなんて幻想です。  私は頓服にソワソワ時のアーテンをもらっている。主治医が言うには副作用止めということだ。ソワソワ時とは具体的にどういうことだかを私なりに説明したいと思う。  結論から言うと、なにもしたくないうえに暇な時、眠らずにごろ寝しているとひょいとイドが妄想を出してくるのだ。もうこの作品を読んでいる読者のかたには、イドが妄想を出した状態に気がつくことが出来ると思うので、妄想やイドを重箱の隅をつつくようなことは辞めようと思う。
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