末路

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 周りでは生活空間を移そうとする動きも見られたが、ぼくたちの家族は動かなかった。  多少の浸水ならこれまでも耐えてこれた。  だから大丈夫だと思っていた。  ただ、あの日は雨の量が一向に減る気配がなかった。  このままでは危ない、外の様子を確認してくるといってぼくだけが安全なスペースに避難して、皆は出かけてしまった。  それきり誰も戻らなかった。  外に出たものに様子を聞くと、知らない方がいい、と言って何が起こったのかは教えてもらえなかった。  ただ、ぼくの家族の亡骸は発見したことは教えてもらえた。  それからも毎年のように雨は降る。  ぼくは何とか雨の被害を避けながら生きてきたが、いつ家族と同じ目にあうか、わからない。  そしてまた、今年も雨が降ってきた。  
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