岸野side

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岸野side

「幸せになろうよ、一緒に」 僕はテーブルに置かれた 川瀬の手を引き寄せ微笑んだ。 「大変だったね‥‥話してくれてありがとう」 川瀬の顔が歪み、目からは涙。 「僕で良ければ、付き合ってください。 泣かないで、川瀬」 繋いだ手とは反対の手で川瀬の頭を撫でた。 「ああ‥‥ごめんな‥‥、幸せになりたい。 お前と一緒に」 川瀬は佐橋からおしぼりを受け取り、 片手で顔を押さえた。 「佐橋も聞いてくれてありがと‥‥」 「知らなかったとはいえ、川瀬の過去か そんなに大変だったなんて思わずに 軽々しく白状しろなんて言ってごめんな」 「いいんだよ、でもこれからは前を向ける。 岸野と2人で頑張れる」 「あー、当てられた。飯食ったらさっさと 帰ろうっと笑」 佐橋は川瀬を軽く小突き、 飯来ないなあ、まだかなあと呟いた。 食べ終わると、佐橋は宣言通り席を立った。 「お幸せに」 「佐橋、ありがとう」 川瀬の後に、言葉を続けた。 「佐橋。僕、ずっと誤解してた。ごめん」 「全然。気にすんなよ。またなっ」 佐橋がいなくなり、 僕は佐橋が座っていた席に移動した。 「岸野。これからどうする?」 「そうだなあ‥‥僕んちで二次会する?」 囁きながら、川瀬と手を握り合った。 川瀬が昔の恋で受けた傷は深く大きい。 でも僕たちは未来に向かって生きている。 だから時間がかかっても、癒してあげる。 今夜からはもう1人じゃない。 佐橋というoutsiderのおかげで、 僕たちは最後の恋に落ちた。
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