9人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆくゆくは彼と最後までと淡い思いを
抱いた矢先、悲劇が起きた。
彼に呼び出された俺は、
日頃誰も立ち入らない空き教室に
足を踏み入れると、ちょうど彼が
窓を乗り越え飛び降りるのが見えた。
「矢嶋っ!!」
声の限り叫び、手を伸ばした俺に、
窓の向こう側、宙に浮いた彼は
優しく微笑み、ありがとうと言った。
彼がイジメられていたのは知っていたが、
俺と付き合うようになったことを
イジメていた奴らは更にイジメのネタにし、
彼を追い詰めていたことは知らなかった。
彼が亡くなった後、俺は誰とも話さない、
関わらない人に変貌し、大学までそれを
貫いた。
彼に近づき恋をしたことが自分の枷になり、
10年経つ今も恋人はいない。
岸野を見ていると、強烈に彼を思い出す。
きっと俺は岸野を好きになりかけている。
だからこそ、2人きりになるのは避け、
佐橋という第三者を隠れ蓑にしているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!