川瀬side

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ゆくゆくは彼と最後までと淡い思いを 抱いた矢先、悲劇が起きた。 彼に呼び出された俺は、 日頃誰も立ち入らない空き教室に 足を踏み入れると、ちょうど彼が 窓を乗り越え飛び降りるのが見えた。 「矢嶋っ!!」 声の限り叫び、手を伸ばした俺に、 窓の向こう側、宙に浮いた彼は 優しく微笑み、ありがとうと言った。 彼がイジメられていたのは知っていたが、 俺と付き合うようになったことを イジメていた奴らは更にイジメのネタにし、 彼を追い詰めていたことは知らなかった。 彼が亡くなった後、俺は誰とも話さない、 関わらない人に変貌し、大学までそれを 貫いた。 彼に近づき恋をしたことが自分の枷になり、 10年経つ今も恋人はいない。 岸野を見ていると、強烈に彼を思い出す。 きっと俺は岸野を好きになりかけている。 だからこそ、2人きりになるのは避け、 佐橋という第三者を隠れ蓑にしているのだ。
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