佐橋side

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佐橋side

川瀬が何を考えて岸野を排除しているのかは 不明だが、決して嫌いでそうしているのでは ないとはわかっていた。 だから最初、川瀬から「悪いけど、岸野が 俺に近づいてきたら間に割って入ってくれ」 と言われた時はとても戸惑った。 岸野の川瀬に対する気持ちは嫌という程 わかっていたし、真面目で誠実な川瀬が 軽々しくそんなことを口にすると思えない。 2人は惹かれ合い、進展していく仲だと 側から見てひしひしと感じていた。 岸野には邪魔者だと疎まれていくだけだが、 いつか川瀬の口から真実が語られるだろうと 信じて、役目を果たして行こうと思う。 とはいえ、川瀬。 邪魔者に徹する代償は大きいぜ?笑笑 「佐橋、ちょっと」 川瀬に呼び止められ、近づくだけで 視界の端に映る岸野が不安そうに カラダを揺らしている。 大丈夫だ、岸野。 川瀬は俺のことなんて何とも思ってない。 そう言ってやりたい気持ちで満ちているが、 川瀬を裏切る訳にもいかない。 でも岸野の健気なくらいの思いを見過ごす のも違う気がする。 いっそ、岸野と話してみるか。 きっと俺なんかって嫌がるとは思うけどさ。
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