4人が本棚に入れています
本棚に追加
「次はユークリッドの生徒たちだ」
ユークリッドの右側にいる、四人の生徒たちの顔を仕上げた。
「この生徒のモデルが誰かわかるかな?」
四人のうち、ユークリッドから一番遠くにいる、緑の服を着た、金色の巻き毛の、女と見間違うような美しい若者を、ラファエロが指差している。
「先生、わかりません」
「これはブルーノ、お前だ」
ブルーノの目が点になった。弟子たちもあっけにとられている。
「賢人は何も有名人とは限らない。市井の人間でも賢人はいる。ブルーノ、お前がいなければ、この壁画は完成できなかった。わたしからのせめてもの感謝の気持ちだ」
居並ぶ弟子たちの間から、大きな拍手が起きた。
「先生……」
ブルーノの両目に涙がにじんだ。
「ブルーノ、そしてお前たち、このことはもちろんユリウス教皇には秘密だぞ」
ラファエロはそう言って、片目をつぶった。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!