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ドラマの撮影が終わったのは、時計の針が21時を過ぎた頃だった。外は深々と雪が降り積もり、街頭やビルの明かりに照らされ、何ともロマンチックな景色となっていた。
私は小さく口を開け、深くため息をつく。
街中でスカウトされて俳優としての仕事をやり始めたが、上手くやれている自信が無かった。
監督や他の演者さん、マネージャーも私の演技を褒めてはくれるけど、昔から表情を変えるのが苦手だった私にとって、誰かを演じるというのは想像以上に大変な事だった。
明日も朝早くから仕事が始まる。これから家に帰ってご飯を作ってシャワーを浴びると、それだけでも日を跨ぐくらいの時間になるだろう。更に台本も読まなければならないし…。
嫌な考えを振り払うように頭を下げた。
ここで立ち止まっていても仕方がない。明日の仕事が無くなるわけではないし、寧ろ睡眠時間が減るだけだ。
とはいえ帰って料理をする気力もない…。
「…よし。久々にあそこに行くか……」
そういう時に、私は向かう店がある。
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