金色のスポークに励まされて

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 そろそろ菊田君も卒業の頃だろうと思って、夜勤の彼を訪ねてみた。 就職はどうするのかと、気になったから。 相変わらずちゃんと仕事をしていた。 「文也君、今日、来てくれて良かったよ。今夜でここのバイト最後なんだ」 良く聞いてみると、この会社の社長さんが4年間自力で学費を頑張った菊田君を大絶賛してくれて、是非とも正社員で来てくれないかと言ってくれたんだそうだ。 でも、やりたい仕事があるのでお断りしたらしい。 菊田君ならどこに出ても大丈夫だと思う。 彼の長い、多分苦しかった4年間が終わるんだと思うと、祝杯でもあげたい気持ちになった。 いや、祝杯じゃない。 固く握手して「頑張ったな」と言って肩をたたいてあげたい気持ちだ。  あれから何年も経つけどあのガソリンスタンドの前を通ると金色のスポークを探してしまう。 菊田君がいるはずもなく金色のスポークのバイクもないんだけれど、いつも僕に 「文也君、しっかり仕事をやってる?お互いに頑張ろうな」 と、言ってくれているように思うんだ。 わかってるよ、菊田君。 また、弱気になったらここに来るからさ、その時は、よろしく頼むよ。 僕はガソリンスタンドをひとしきり眺めて、元気をもらって帰るんだ。
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