1. 少年の霊の告白

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1. 少年の霊の告白

 20XX年。小学生だった僕は、クリスマス前に同じクラスの修太と殴り合いの喧嘩をしたんだ。    夏ぐらいから、夜中に鎧を着た青年の霊がベッド脇に佇んで、僕の顔を覗き込んでいることが何度もあった。きっと、その心霊現象のストレスが溜まっていたせいで喧嘩をしてしまったんだと思う。鎧を着た青年は、いつも無言のまま気味悪く微笑んでいて、現れる度に僕の心を蝕んでいた。  とにかく、その日の夜、憎い修太の顔を思い浮かべながら『クリスマスプレゼントに、嫌いな存在を消すことができる消しゴムを下さい』ってサンタさんに手紙を書いて、部屋にある机の上に置いた。  代替わりしたのか、最近のサンタさんはリクエストしたものを何でも用意してくれるから、実に便利。  クリスマスの夜、部屋の電気を消して、眠気を我慢したままベッドの中でサンタさんが来るのを待った。朝までは確かにあったはずのサンタさん宛の手紙は、いつの間にか消えていた。  ずっと待っていると、あらかじめ鍵を開けておいた窓をガラガラっと開けてサンタさんが入ってきた。  僕は慌てて目を瞑り、サンタさんの動きを感じる。  枕元に、プレゼントが置かれる音がした。その瞬間、飛び起きた。そのまま、サンタさんを捕まえようとしたんだけど、サンタさんは「おぉ!」と焦りながら部屋から逃げようとする。  だが、僕の方が上手だった。  去年、サンタさんにプレゼントしてもらった『どんなターゲットでも素早く捕まえるライオン型のロボット』が、僕の口笛を合図にクローゼットから飛び出してきて、一切無駄のない動きでサンタさんを取り押さえる。  僕は急いで、さっき枕元に置かれたプレゼントの箱を開けてサンタさんの顔に『嫌いな存在を消すことができる消しゴム』を擦りつけた。  サンタさん。あなたを消すことにした理由は、子どものリクエストに応えすぎだからだ。  あなたが子どもたちに与えてきたプレゼントで、どれほどの犯罪が生み出されたのだろうか?  修太との喧嘩の発端は、『サンタクロースは子どもが欲しがっているプレゼントを無条件に与えるべきか否か』というテーマについて意見が割れたからだった。  プレゼントは送る相手をちゃんと選ぶべきだったね。  世界中のすべての子どもが、良い子であるはずがないのだよ。良い子のふりをしている悪い子は、たくさんいるのさ。僕とかね。  犯罪に加担してきたあなたを、今すぐに消してやろう。密かに、悪を裁く悪に憧れていたんだ。  ……あれ? なかなか消えないぞ。効果が出るまで時間がかかるのだろうか。  まさか、この消しゴムは偽物?  僕はパニックになりながらサンタさんの顔を触り、驚いた。  手触りで、ああ、そういうことだったのかと状況を理解したんだ。 ―数日後、僕はこの世から消されることとなった。            
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