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転生したら犬(♀)だった
「シバ子〜、お散歩行くよ〜!」
「ワン!」
俺は柴犬のシバ子。さっきまでホモサピエンスのオス(30)だった。
理由は知らんがたぶん過労か何かの理由で死んで、犬に転生した。
俺をシバ子と呼んだ女の子は飼い主だ。
白いセーラー服に高校の校章がついている。
この子が俺の名付け親っぽいけど、ネーミングセンスゼロだなぁ。
【あたしは白井百合。今日から花の女子高生だ。入学式が楽しみすぎていつもより早起きしちゃったから、シバ子のお散歩に行くことにした】
モノローグキターーーーーーー。
どこからともなく現れる四角い解説。
俺は理解した。
ここはマンガの世界なんだと。
モノローグさんは俺にしか見えていないのか、百合はモノローグさんを素通りする。
俺に首輪をつけて、いざ朝の散歩へGO。
今は4月はじめ。朝の空気はひんやりしていて、毛皮に包まれた身でもちょいとヒンヤリするから、くしゃみが出る。
「大丈夫? シバ子。お鼻ふいてあげるね」
女子高生に鼻をぬぐわれるなんてホモサピエンス時代にはなかったぜ。
公園前を通る道を行くと、同じく犬の散歩中のお姉様に遭遇した。
そのニットワンピース、お似合いです。
この人モデル? お胸が豊かなエレガントお姉様は白いチワワを連れている。
【この人は紫原スミレさん。幼い頃いつもあたしの面倒を見てくれていた近所のお姉さんで、あたしが今日から通う花の丘女子高校の卒業生でもある。】
「スミレさん、チィちゃん! おはようございます!」
「百合ちゃんおはよう。あなたの挨拶はいつも元気がいいから、気持ちがいいわね」
「えへへ。スミレさんに褒められると嬉しいな」
「その制服、花高でしょう? 似合っているわ」
「叶うなら、スミレさんがいるうちに後輩になりたかったです。あたしがあと三年早く生まれていれば一年だけでも一緒に通えたのになぁ」
照れ笑いする百合。犬なら尻尾をブンブン振り回していそうだ。
「シバ子ちゃんも、今日も元気ね」
スミレが俺の頭をなでなで。
「シバ子だけずるい」
「うふふ、ヤキモチ焼いてるの? 百合ちゃんも、小さい頃いつもこうしていたものね。なでなでしてあげる」
俺を出汁にしてキャッキャウフフな雰囲気を醸し出す二人。
【この散歩ルートならスミレさんに会える。優しくてふわふわしていて、あたしの憧れ。スミレさんみたいになりたいな】
モノローグさんによって投下される爆弾。
もしかしてこれ、ユリ漫画?
俺、百合に挟まれる犬に転生したんすか。
メス犬なのもそういうことですか。
百合に挟まる男はシあるのみ。
よく見れば通行人はおばちゃんや枯れたじいちゃんばあちゃんくらい。妙齢の男がいなくないか?
部活朝練の男子校生とか走っていても良さげなのに。
チワワのチィ(♀)もやけに大人しく、ラブい空気が終わるの待っている。お利口ちゃんすぎる。
なんでだ、なんでなんだ。
俺、来世があるなら美少女&美女に囲まれるハーレムがいいって思っていたのに。
たしかにご主人が女子高生で美女もいる。かわゆい女性に囲まれているけど、これじゃない!!!!!
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