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去年の秋。大人になった俺と弟は、のこぎりとスコップを持って裏庭に立っていた。今までは枝葉が邪魔をして、動物の全体像が見えないことがあった。視界を広くして、もっとのびのびと眺めてみたい。
庭木を次々と切り倒す。可哀想だが、ゾウを見るためだ。
二人で根を掘り起こしていると、スコップの先が、何やら硬い物にぶつかった。
出てきたのは、不思議な形をした金属の塊だった。泥まみれな上に、表面はひどく錆び付いている。よく調べもせず、俺は言った。
「がらくただ。さっさと捨てよう」
俺たちはその塊をばらばらに壊して、適当に仕分けてゴミの日に出した。
二月。今日は東京で大雪の予報だ。観察にはうってつけの天気である。俺たちは会社も大学も休んで、動物たちが現れるのを今か今かと待ちわびた。
だが、こんなに降って降りやまないのに、ステゴドンはおろか小鳥一羽出てこない。不思議に思っていると、弟が「もしかして」と言った。
「地面に、変な鉄屑が埋まってただろ。あれは、一種の投影機だったんだ。あの機械が映像を受信して、雪のスクリーンに風景を映し出してたんだ」
俺たちは悔んだが、気付くのが遅すぎた。無駄に広くなった裏庭に、雪がむなしく降り積る。
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