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「やっぱー、いいチョコはいい匂いがするよねー、ねぇ耀ちゃん」
「ん?」
お姉ちゃんが、僕の肩を抱いて歩いてる耀くんを見上げながら言った。
「ほんと抜かりないよね、耀ちゃんて。恋人の鑑!」
この幸せ者!っとお姉ちゃんに鼻を押された。その鼻を、今度は耀くんが長い指でスッと撫でた。
ドキッとしちゃう
バレンタインが過ぎて、またいつもの日常が戻ってきた。学年末テストに向けて勉強しなきゃいけないから、僕と耀くんもみんなと一緒に僕ん家に向かってる。
「え?! ほんと? 光ちゃん」
背後で華ちゃんの声がした。みんなで振り返る。光くんと華ちゃんは、たいてい一番後ろをちょっと離れて歩いてる。
光くんが照れた顔をして、うん、うんて頷いてる。華ちゃんがキラッキラの笑顔を向けてる。
すっごい可愛い
「なになにー? どしたの華ちゃん」
お姉ちゃんが声をかけたら、華ちゃんがえへへへーって笑った。光くんはちょっと顔が赤い。華ちゃんが光くんの腕を抱いて引っ張りながら僕たちに近付いて来る。
華ちゃん、笑顔全開!
「あのね! 土曜日にね、ペアリング見に行ってくる!!」
「えー?!」
「わー!! ほんとー?! よかったねー、華ちゃん!」
「おー、そっかそっかー。頑張れー、光輝」
女の子たちが華ちゃんとハイタッチして、男子は光くんを肘で突いたりしてる。
耀くんは光くんを微笑んで見てて、僕は華ちゃんと片手ハイタッチをした。
「みんなありがとー」
華ちゃんがにこにこしながら光くんと腕を組んだ。
可愛い
光くんが照れてるのも可愛い
「いいねー、うちら平和ー」
「幸せオーラがあちこちから出てるからなー」
「水瀬家、パワースポットなんじゃね?」
「あたしまだご利益ないんだけどー」
お姉ちゃんがボヤくと、あはははーっとみんなの笑い声が響いた。
「相変わらずみんな仲良いわねー」
って、ちょうど出てきたお隣のおばさんが笑いながら言った。
「らぶらぶでーっす」
啓吾が両手でハートを作りながら応えた。
おばさんは「あっはっは」って笑って手を叩いて、
「それが1番!」
ってグッドサインを送ってくれた。
そして僕たちはみんなで、出かけて行くおばさんに手を振った。
「…おばさんさぁ、俺が朝、碧を迎えに来た時よく家の中から手ぇ振ってくれるんだよね」
「え?」
ボソッと言った耀くんを見上げた。
え、それってバレてるってこと?! マズくない?!
「でもま、「それが1番!」だからいっか」
そう言って、耀くんが舌をぺろりと出して笑った。
いいの? いいのかな?
でもおばさん笑ってたし、耀くんも「いっか」って言ってる。
なら、いいのかな
僕は耀くんの腰に回した手で、耀くんのコートをぎゅっと握った。
耀くんが僕を抱き寄せて、髪にちゅってキスしてくれた。
了
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