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 みんなでスーパーのバレンタインコーナーに行ってチョコとかの材料を買って、100円ショップでラッピング用品やチョコの型とか、デコレーション用のものとかを買った。 「もうなんかワクワクするね」 「バレンタインのコーナーがすでにワクワクするしね」 「ハートいっぱいで可愛いし」 「でも作るのは友チョコ」 「本命も作るじゃん、2人が」  ねーってえりちゃんが僕を覗き込んできて、思わず手を鼻のあたりに持っていくと、指輪が陽の光を受けてキラッと光った。 「あー、ほんと綺麗。いいなぁ、碧」  斜め後ろから華ちゃんが言う。 「光ちゃんにお願いしてみたら? ペアリング欲しいなーって」 「でもそういうのって、言ってないのにくれたら嬉しくない? 碧はどうだったの?」 「え?」 「クリスマスプレゼント、だよね?」 「うん」  隣を歩いてたえりちゃんが前にスッと進んで、華ちゃんが僕の横に来た。 「あ、えっと…、僕は…耀くんがバイトしてるのも知らなくて、すっごいびっくりして、すっごい嬉しかった…よ?」  目を開けて、薬指に嵌められた指輪を見た時の感動を、今もはっきり覚えてる。 「サプライズかー。しかもサイズぴったり。お直しとかしたの?」  ううん、と首を横に振ったら、華ちゃんたちがうんうんて頷いた。 「そのへんも耀ちゃんって感じ。格好いいわぁ」 「ねー。光ちゃんにもそこまで育ってほしいっっ」 「あははははー。祈ろう、みんなで」 「光くん頑張ってー」  みんなでこの場にいない光くんを励ましながらうちに帰って、買ってきたお昼ご飯を食べて、お菓子作りに取りかかった。 「ブラウニーって作るの久々じゃない?」 「ねー、昔よく作ったよね」 「ねぇ碧」  チョコを湯煎で溶かしていると、ちかちゃんが僕の隣にやって来た。 「ちかも耀くんにあげていい?」  キレイにメイクをした大きな目のちかちゃんが、僕を覗き込んで訊く。 「…他のみんなとおんなじのなら、いいよ?」  ちかちゃんは毎年、耀くんだけ違うチョコをあげてた。 「うん、分かった。…なんかいいね、碧のその感じ。ちゃんと「耀くんは僕の」って思ってる感じする」 「!」  ふふって笑ってちかちゃんが言う。 「今度みんなで出かける時にさ、ペアリングしてきなよ。耀くんと2人で。だいじょぶだよ、もう令和なんだし。てゆーか、あの格好いい耀くんの隣に立てるの、可愛い碧だけだから。ちかが保証する。だから、ね?」 「ちかちゃ…」 「あー、今度はちかちゃんが碧泣かしてるー」 「チョコに涙が入ったら大変。水分厳禁よー」  さっちゃんがティッシュで僕の目元を押さえてくれた。 「まぁ分離してても耀ちゃんは食べると思うけどね。碧が作ったんなら」 「食べる食べる。碧のこと大好きだもんね、耀ちゃん」 「そうそう。昔っから耀くんは碧が1番」 「…だから私、光ちゃんにしたんだぁ…」 「え?」  華ちゃんは、ゆっくりとチョコをかき混ぜている。 「耀ちゃん、カッコよくて大好きだったけど、耀ちゃんが1番気にかけてるのはいっつも碧で。その時は、耀ちゃんは碧を弟みたいに思って世話焼いてるんだろうって思ってはいたけど、それでも、耀ちゃんの中での絶対的1番は碧なんだなって。だから、私を1番好きって言ってくれる光ちゃんと付き合うことにしたの」  華ちゃんのチョコレートは滑らかに溶けて、甘い香りを漂わせている。 「…初めてしたね、こんな話」 「みんなで恋バナってさ、しづらかったよね、前は」 「わかるー」 「もう今は耀ちゃんが碧のになって逆に落ち着いたよね」 「ね、しかもベタ甘にラブラブだしね。人前であれってことは2人っきりだとどうなってんの? 碧」 「え…っ」  心臓がドキンと鳴って顔がボボッと熱くなってきた。 「あはは。言わなくても分かるー。でもちょっと壁になって見てみたい」 「ほんとほんとー」  そんな話をしながらワイワイとお菓子を作って、ラッピングは手先が器用なさっちゃんに教えてもらいながら頑張って、まぁまぁいい感じにできた。  ブラウニーの端っことか、形がイマイチなチョコとか、残って半端になって丸めただけのクッキーを「味見味見ー」とかってみんなで食べて、「あたしたち天才!」ってまたお姉ちゃんが言ってた。
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