蕭然の揺籠

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 扉を開けると、向こう側にはベッドで上半身を起こす友人の姿があった。  骨に皮が張り付いただけの弱々しい腕が見える。  こちらの姿を見つけると控えめに手を振る。  手を振り返すと友人は微笑んだ。  四年ぶりの再会だ。  ざあざあと物寂しく雨音だけが聞こえてくる。  雲が厚いからか日差しは全く届かず、室内灯もいくつか切れてしまって、澱んだ空気が重々しく溜まっている。  やけに薄い掛け布団が美人と呼ばれ続けた友人には似合わない。  点滴を見るとその痛々しさに目を背けたくなる。 「私、もうだめらしい。そういうの分かるんだ、私の身体が最期の準備をしてるって」  もし仮に余命宣告のようなものがあっても再会の挨拶にしては盛り上がらない。  そういうやつだった。  自分勝手な友人。  高校でずっと仲良くしていた。  隣にいるのはいつだって友人だった。  己の弱さゆえに高校を中退したとはいえ、まさかすぐに音信不通になるとは想像もしていなかった。  当時は見限って捨てたのだと思っていた。  ようやく呼び出されたと思えば、ひっそりとした病院の一室だ。  隣にもベッドが用意されているものの、シーツが丁寧に畳まれてベッドの上に乗っている。つまりはそういうことだ。  ここはきっとそういうところなのだ。  それでも再会の一言目はあまりにも不親切だ。
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