6人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って弟はフライングのごとく駆けていく。「えっ?ちょっ待てよ」と叫ぶが時既に遅し。弟の背中はみるみるうちに小さくなっていく。その後ろを為す術もなく追走した。
案外重たい体は鉛のようで、少し走っただけでも息切れする。学生の時は陸上部に所属していたのに____。
それでも、茜色の空の下、イチョウ並木を駆け抜けた。
辛うじてゴールすると、スポーツドリンクを渡された。カラカラに乾いた喉へ水分が染み渡り、生き返ったような錯覚に陥る。
「くーっ!うめぇな、これ」「頑張った分、最高だろ?」「ああ」
この感覚は一年経ってもきっと忘れられないだろう。
清々しい気分を覚えていると、弟は口を開いた。
「噂によるとこの先には幻の神社があるらしいぜ」
「昔、ばあちゃんが言っていた、あの?」
まさか、この枯れ野の中に神社などあるまい。
最初のコメントを投稿しよう!