小雪

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 分厚い雪雲が潜む、真っ黒な夜空から舞い降りてくる白い雪は、無限ではないかと思えるほど、夜空から次々に現れては我が家の小さな庭に降り積もって行く。  当時、4歳の小雪は雨戸を少し開けたところから、それをずっと眺めていた。  父親は仕事だったのか、自治体の集まりだったのか、目まぐるしく雪が降り積もる中で、当時小雪は家に母親と二人っきりだった。 「小雪さん、もう寝なさい。夜も遅いし、部屋がすっかり冷えちゃったわよ」  母親がいつまでも、雪を眺めている小雪に小言を言った。  小雪の母親、妙は育ちがいいのだろう。  自分の娘を呼ぶのに、さん付けで小雪さんと呼ぶのだった。  名前から察せる通り、あれは小雪の誕生日の前後だったと思う。
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