3 答え合わせ

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 これからいつもの服装に戻って、キッチンカーでお弁当を売るなんて。まるでシンデレラみたい。ドレスを着て一晩夢を見た後は、何もなかったかのように普段の生活に戻るの。 「今日これから会社に行って、山下の土地について資料を見てみるよ」  突然そう声をかけられ、ハッと我に返る。そうよ、彼に声をかけたのはあの土地のことを知りたいからだった。ついいろいろなことがありすぎて忘れてしまっていた。 「あなたも忙しいのに、こんなこと頼んでしまってごめんなさい」 「いや、杏奈が不信感を抱くくらいだから、やはり何かあるような気がするんだ。どういう経緯でその土地の入手に至ったのか調べてみる」 「ありがとう……」  彼は私のことをどういう人間だと捉えているのだろう。言葉を交わしたのなんて、昨日がほぼ初めてなのに。 「いいんだ。一応今日の報告をしたいから、今夜一緒に食事でもどうだろう?」 「……でも明日は仕事があるし、電話とかメッセージでいい気がするけど」 「細かい情報の共有と話し合いがしたいんだ。それには面と向かって話をしないとね」 「……本当に食事をして話すだけ……よね?」 「あぁ、そのつもりだよ。ただ心配なら着替え一式とメイク道具を持ってきた方がいいかもね」  高臣が不敵な笑みを浮かべただけで、杏奈の体は熱くなってしまう。 「じゃあ食事だけなら……」 「良かった。昨日のイベント会場だよね。仕事が終わり次第連絡をくれれるかい? 迎えにいくから」 「あの、着替えたいから……」  迎えはいらない、一人で行けると言いたかったのに、 「なら家に行くよ」 と高臣に押し切られてしまった。  いつもあのメンバーと一緒にいた彼は、何に対しても興味を示さず、静かに壁に寄りかかっていた。だからこんな強引な一面があったと知って、少しずつ彼に興味が湧いてくる。  まるでただ真っ黒だったキャンバスに、少しずつ色が足されていくような感じ。無機質だったものが形作られていく。 「……じゃあ準備が出来たら連絡するわ」  杏奈が住むマンションの前に車が到着し、荷物を持って車から降りようとした。しかし高臣に手を掴まれ、身動きがとれなくなる。  杏奈は怪訝な顔で高臣を見たが、彼は意も介さず嬉しそうに彼女の手に口づけた。 「あぁ、待ってるよ」  真っ直ぐに杏奈を見つめる上目遣いにドキッとしたが、それを悟られないよう慌てて外へと飛び出した。
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