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プロローグ
毎年桜の花びらが舞うころ、4月8日の午前10時22分。
「しあわせどうぶつ」と語呂合わせで覚えるらしいこのとき、一年に一度だけ、魔法が起こる。
それも必ず、動物に関連した奇跡が。
なんでもこの街の中心にある神社には、うさぎの神様が祭られていて。
そのうさぎは、お腹がすいている帝釈天って偉い神様に自分を食べてくださいと身を捧げたあと、この街の守り神になった優しいうさぎだそうで、一年に一度だけ、この街で悲しい想いをしている子どもの願いをかなえてくれるんだって。
去年のこの日、小学生の女の子をいじめつづけていた同級生たちが、ご近所中の犬に追いかけられてひどい目に遭ったとか。
一昨年は、海外に赴任しているおとうさんからもらった大切な外国のコインを川に落としてしまった男の子が、日本に一時帰国していたおとうさんといっしょに釣りをしていたら、釣った魚の口の中に、そのコインが出てきたとか。
わたしの通う中学でもそんなうわさが囁かれている。
動物好きとしては、ちょっといいなとか、信じてみたいって気持ちはあるけど。
でも、うわさはうわさ。
そんなことが現実に起きるわけがないって、思ってた。
中学二年になったその年の4月8日、時計の針が10時22分を刻むそのときまで。
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