10人が本棚に入れています
本棚に追加
この動物園には何度か来たことあるけど、こんな場所なかったような。
いったいこんなかわいい家がなんで動物園の中に?
ふしぎに思って首をぐるりと回して、びくっと、頭の上にある耳が左右に開いたのがわかる。
生活スペースの前はうってかわった雰囲気だった。
カメラや機材がたくさんある。
そこに例の同じデザインの服を着た人たちが行きかっていて。
その中の一人の人の背中の文字を、追ってみた。
ん?
『エクレールがやってくれーる』……?
ききなれたフレーズ。
もしかして、これって――。
「うきゅっ」
変な声出しちゃった。
いきなり抱え上げられて、まじまじとのぞきこまれたから。
どうしよう。
見つかっちゃった……!
私の脇を抱えて持ち上げているのは、パーカーのフードを目深にかぶった男の子。
明らかにわたしより年上だ。高校生くらいかな。
パーカーからちょっとだけ除く目が優しい。
真剣な目でのぞきこむと一言、彼は言った。
「すげー、美人」
一瞬思考が停止する。
ちょっとだけ高めの、きれいなアルト。
この……声。
最初のコメントを投稿しよう!