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カメラマンさんの人差し指がむけられたとたん、がちっとふたたび固まる身体。
「……ゆっきゅん」
うなだれる有輝くん。
そのサイクルを、何度となく繰り返しあと、スタッフさんもしびれをきらして、一旦休憩をはさむことになった。
あー。やっちゃった。
もとから人前でなにかするの、苦手なんだよね。
そんなことを思っていると、
ふわっと身体が持ち上がって。
撮影スペースの外の原っぱに降ろされた。
となりから細い指がちょんちょんと頬をつっついてくる。
「なんかふしぎだな」
ぼやくのはやっぱり、有輝くんの声。
「お前緊張してんの?」
こくこくと、何度もうなずく。
そうなの。ごめんね、有輝く……。
「うさぎなのにいっちょまえに緊張とか生意気だぞー。うりうりっ」
今度は激しめに、ほっぺをつつかれる。
「きゅいきゅい」
意識しなくても、嘆きの声が出る。
有輝くん、怒ってるかな。
そう思ったとき、ぽんと、背中に手が置かれた。
置くっていうより、添えるっていったほうがいいような、優しさで。
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