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「よしよし。とりあえず、これ食うか?」
有輝くん……。
じわりと視界がにじむ。
テレビで見たのとおんなじだ。
人にも、動物にも、すごく優し……。
いいっ!?
目の前に差し出されたものを見て、感動の涙がひっこんだ。
それは、調理されていない、生のかたそうなニンジン。
そういえば今朝から何も食べてなくてお腹が空いていたのを思い出したけど。
でも、さすがにこれは。
「ん? なに、今度はうさぎのくせに遠慮か? ほら、食えよ」
さわやか笑顔ですすめられたらしょうがないか……。
さきっぽを一口かじって。
うっ。
やっぱりかたいしおいしくない。
ちょっと、有輝くんの目がけげんそうに細くなる。
まずい。
怪しまれた……?
「うさぎなのに、ニンジンきらいなの……? お前、もしかして」
え。ほんとのほんとに、ばれちゃったの?
どうしよう。
思わずぎゅっと目をつぶりそうになったとき、ぱっと、有輝くんの目が大きく開かれる。
「さてはグルメだなっ。さらに生意気だぞ、いっちょまえに」
なんだ。
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