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原っぱまで来てぴたりと立ち止まった美谷島くんは、切羽詰まった表情をわたしに向けた。
「きみ、白い雪うさぎ見なかった?」
「……あ。えっと。その」
混乱する頭で、答えを急ぐ。
「雪うさぎは、わたしだから」
出た答えは、解読不能なもので。
「え?」
有輝くんは目を大きく見開いている。
うっ。まずい。
「雪うさぎは、わ、わたしのだから。持って帰ったの!」
あわてて頭をフル回転させて、渾身の言い訳をでっちあげる。
「うち、この近くで動物保護施設をやっていてね。うちの雪うさぎがこの動物園に迷い込んじゃったの。だから、わたしが追いかけにきたの」
とっさに口をついて出た半分の嘘。
「……そうだったんだ。ゆっきゅんは動物園の子じゃなかったんだ」
でも人のいい有輝くんは信じてくれたみたい。
後ろを向いてひそかにほっと胸をなでおろしていると、ぱちんと勢いよく手のひらを合わせる音が響いた。
ふりむくと、有輝くんが両手をあわせてかがみこんでる!
「お願いがあるんだ。あのうさぎを6日間だけ貸してくれないかな?」
上げた顔は、今までで一番、真剣な表情。
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