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ごまかすように付け加えた言葉に、大きな目がこぼれるように微笑んだ。
「うん」
有輝くんが言う。
「明日、この動物園の裏口の関係者用ゲートのとこで待ってる」
そして向きを変え、こっちに来る。
すぐ近くまで接近してきて。え。な、なに?
戸惑っていると有輝くんは――ふっと、わたしの額めがけて息をふいた。
春風に舞うたんぽぽの綿毛のように、前髪が踊って――。
え。
「ふぇぇぇっ」
「おっと」
思わずのけぞってしまった身体を有輝くんの右手が支える。
いたずらっぽく笑って、彼は左手につまんだなにかを差し出した。
「ついてたよ、これ」
それは真っ白い毛だった。ふわふわしている。
ゆっきゅんの毛だ。
それを愛しげに見つめながら、彼は呟く。
「――天使の羽だったりして」
さっきからどきどきうるさい心臓の音が、一段、大きくなる。
「きみは、オレとゆっきゅんを巡り合わせてくれた天使かもしれないって思ったんだ」
かぁぁっと頭に血がのぼって。
有輝くんが高々と手をあげて歌いだしてる歌詞も頭に入ってこない。
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