春雪ノ奇跡

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 今の友達がいない、ならば小学生の頃の友達はと言うと…はっきり言って小学校の頃の友達は苦手だ。うちの中学に来たの、私以外、全員陽キャだから。泣きたい、今度こそ泣いていいよね? ガチで。  ま、またチョイ戻すが、その陽キャの中で、男子にいちばん苦手なやつがいる。東 簫(あずま しょう)だ。あの男に渡しがしたこと全てが、思い出したくもない黒歴史ばかりだ。しかも…いや、言わないでおこう。簡単に言えば、ベテにベタを塗りつけてサンドウィッチにしたあとにプラスでベタをのせても常任が絶対に手を出さない領域に入ったベタだということだ。  そしてあいつのたちの悪いところは、そういう焼却炉に燃やして『good bay!』してほしいやつを、親切丁寧に保管してるのだから大きなお世話だ。 キーンコーンカーンコーン  すると、チャイムの音とともにみんなの競馬が始まりだす。まさに馬の足音のようにドタドタと席へ走り、『ガシャン!』と音を立て僅かに衝撃で震えている椅子は、もう少しで壊れてしまうのではといつも心配になる。  先生が来れば、男子が明日のことで質問をしたり、しなかったり。 「明日雪降んですか―!」 「どうだろうね」  ほらやっぱり。しかし、先生のこういうとき(くだんない質問)の返事は鋭さ完璧である。  そろそろかな、と時計を見ればチャイムは鳴るまで、あと十秒。  というところで、 「起立、気を付け、さようなら」  という声とともに、みんなが走り出した。こういうときって、ゼッタイ言わないやつ一人か二人いるよね。いや、もっとか。  私は、いつものように肩が壊れそうなくらい重い(自分の筋肉のなさに泣ける)リュックを背負い、片手に本持ち一人帰路につく。  しばらく歩き、あまり下校者の通らない線路沿いの道を、のんびりと小さな歩幅で歩いていると、足を止めてなんとなく空を見る。晴天、とまでは行かないが、一応晴れていて、太陽も出ている。空の海と言えるくらいには青い。明日、雪が降るとは到底思えない。再び足を進める。  その時、ふと六年生の頃に簫と二人だけで返ったことが頭にポンと浮かぶ。
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