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あの頃は、陽キャが嫌いだなんて一ミリも思っていなかった。だから、あいつもいい友達だった。その時、臆病なのに、断られたらどうしようって心のなかで思っていても、勇気を出して『い、一緒に帰らない?』って、誘って『いいよ』って言ってくれたのがすごく嬉しかった。本当に嬉しかった。
その後、私は何を思ったのか友達に『だ、男子と仲良くしたいと思うのって恋なのかな?』と聞いた。そして、事を犯したあとに我に返り、必死に言い訳をしようとするが、ただ口を餌を求めようと訴える鯉のように口をパクパクさせるだけだった。
それで返ってきたのは『恋なんじゃね?』という適当すぎる返答だった。
いや、ありえない。『絶対にそんなこと無いんだからね!』と否定しようとするが、実際に口に出していないことは事実である。『CHICKENか!我は!』
とその時の私は臆病すぎる自分に、沸騰しそうなまでの怒りを覚えた。実際に沸騰はしていないし、自分のことなんだけどね、うん。
で・す・が。今でも、ありえないと思う。私は、その時のことを否定するように早足で歩く。
そして、その日は何事もなく、無事家についた。
よる、母が『明日は雪が降るから、傘を持って長靴はいていきなさいね?』と言った。しかし『いや、明日は体育があるし、外かわかんないからいいよ』と言って、私は次の日普通の靴を履いて登校した。朝、あまり雪が降っていなかったが、不運にも体育の着替え中、それは逆転する。
「授業、雪結構降ってるから体育館だって」
誰かがそう言っているのが聞こえる。
その瞬間、背中にヒュルリと冷や汗が流れる。
(雪が降っている。しかも、思った以上に。)
嫌な予感がし、急いで着替えをする。窓のそばへ駆け寄れば、大粒の”ソレ”は深々と降っていた。雪だ。しかもすでに積もっている所もチラホラ。
その後も、着々と授業を終えるが雪は一向に止まず、その日の帰り学活のあと、外を見れば一面は美しい銀世界とかしていた。遠くの屋根の上にも雪がビッシリとつもり、ふわりと霧がかかったように見える。
少しでも雪に濡れないようにするために、本を片手に傘をさす。不安定に揺れてしまう傘を肩に乗せ、ひらりとブレザーについた小さな雪の結晶を払う。そうやってポテポテと歩いていると、すぐに靴や靴下が濡れ始め大洪水とかす。私の心には絶望しかなく、重い溜息がこぼれる。ぐっしょりと水で濡れてしまった重い靴で、なんとか足を進め、あの線路沿いまでつく。その時、近くに降り積もった雪の山を、雪への怒りをぶつけてけとばす。すると、そのひょうしに、
ズルッ
足を見事に前へ滑らせ、後ろに倒れる。
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