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上がってしまう口角を下げようとしても、どうしても下がらない。ふと空を見上げれば、一面雲だった空の隙間から、一柱の光が降り注いでいた。その光は、とても美しい。まるでキューピッドが舞い降りてきそうな、そんな光。
そんなとき、どうしてか思い出してしまった今日の日付。二月十四日、今日は…そうだった。こんなときに思い出してしまうなんて、やっぱり私の体は反抗期だ。
それを思い出して、私は遠くにいるあいつに、心のなかで話しかける。
『ねぇ、知ってる?バレンタインは、男性が女性にバラの花を送って愛を伝える日なんだよ。君は…』
簫はどういう気持ちでいったの? 今の私の気持ちがわかる? そうやって、何故か溢れてしまう大粒の涙を瞳にたたえ…私は気付いてしまった、自分の心に。本当に反抗期だったのは…私のひねくれた心。そうして、口から”ソレ”は零れた。
「私も、簫が好きだよ。」
震えた声で、今にも消えてしまいそうな声で告げた言葉。きっと、あいつには届いていない。この”バレンタイン”の日に気付いた、本当の心…それは純粋な愛だった。
胸が焦げてしまいそうなくらい熱くて、張り裂けるくらいに苦しい。
でも、それを心地いいと思ってしまうのはなぜだろう?
”コレ”が”恋”なのだろうか?
それは春に降った雪が降った日、バレンタインの奇跡なのだろうか?
すると、後ろにゆっくりと振り返る。その優しく微笑むあいつの周りには、この聖なる奇跡の日を称えるように、真っ白な結晶が、空から静かに降っているのが目に焼き付いた。
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