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父と離婚した後、母は私たち姉妹を連れて伏見の実家に戻った。中学三年生の時だった。
駅舎のすぐ傍を琵琶湖疎水が流れていた。
この水は将大の住む町から流れてきたのだと、落ち込む心を奮い立たせようとしたけど駄目だった。
ごちゃごちゃと林立する建物の隙間から見えた東山が、却って疎外感を増幅させた。私たちは、碁盤の目から弾き出されたのだ。
「やっぱり、大阪より冷えるね」
女性の二人組が、声高に意味の分からない外国語を話しながら、私たちを追い越していった。
「ほんと。もう十一月も末だもんね」
冷たく乾いた風が電線を鳴らして吹きつけた。
誰かの捨てたマスクが飛ばされて、植え込みの柵に引っかかって止まる。
髪を切ったせいで剥き出しになった首筋から寒風が吹き込み、体の芯に震えが走った。
化繊のセーターは、ふわふわとした見た目からは想像できないほど、保温効果に乏しい。
「典ちゃんは俺と話すと関西弁じゃなくなるね」
「そう? 要君が標準語で話すから、つられちゃう。変?」
「大丈夫。京風の標準語だよ」
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