序章

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 誰かのたった一つの愛を切に欲しがるなんて、なんて愚かしくて不自由なんだろうって思っていた。  だけど、御典が胸をいっぱいにしているのを感じると、少しだけ羨ましくもある。  もちろん、私はそんな執着とは無縁でいたい。私はただ楽しくあればよいのだ。  音楽は好きだし、ライブの一体感は面白い。    前のめりに楽しもうとしている人たちの、開放感に溢れた顔を見るだけで心が浮き立つ。  また明日からも頑張っていけたらいいねと、エールを送りたくなる。  このところ御典は受験勉強で忙しいし、ちょうど退屈していたところだ。  一人で色々行ってみよう。  なんせタダだし。  身体のない私はとても自由だ。  高く浮かび上がると、曲に合わせてバレリーナみたいにくるくると回転した。  どこか懐かしい感じのするこの曲は、将大の頭の中で生まれた時からお気に入りだった。  ぎっしりと詰め込まれた観客の頭上を超え最前列に飛び込むと、リズムに乗って好き放題に踊った。
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