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「要君、典ちゃん」
白い衣装に身を包んだ将大が、階段を駆け上がってくる。
「ライブ、来てくれてありがとう」
「将大さん、滅茶苦茶カッコよかったです! カラフルで、パワフルで、ソウルフルで、俺めちゃ楽しかったです。ファンになりました!」
「ほんま? 嬉しいわー。俺もめっちゃ楽しかった」
白い歯をのぞかせ満面の笑みを浮かべると、腕を伸ばして私の頭を撫でた。
「典ちゃんも楽しんでくれた?」
頷いた途端、辛うじて表面張力を保っていた涙が、ぽつりと零れ落ちた。
「あーあー、もー、泣くことないやん。かなん子やなー」
普段通りのんびりした口調で言いながら、私の濡れた頬を指の腹で拭った。
「歌ってるときステージから見たら、もう既に典ちゃん泣いてるし。俺ももらいかけて、危なかったんやで。泣いたら歌われへんやん」
「だって、感動してんもん」
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