29人が本棚に入れています
本棚に追加
「泣いてごめん」
今日は、将大の晴れ舞台だ。要が貸してくれたハンカチで、涙を拭う。
「私も、めっちゃ楽しかった。将大にい、おめでとう」
「ありがとうな、典ちゃん。勉強で忙しいのに、わざわざ来てくれて嬉しかったわ」
「そんなん、見逃せるわけないやん。勉強どころじゃないし」
「写真撮ろ。昨日ゆうてたやろ」
泣いたことを後悔しながらも嬉しかった。
昨夜電話で交わした短い会話の中で、写真が撮れればいいな、と言ったのを覚えていてくれたのだ。
将大が腕を伸ばして構えたスマートフォンに、三人仲良く収まった後、要が私と将大のツーショットを撮ってくれた。
「直にファンが大勢ついて、こんな風に話したりできなくなるんだろうなぁ」
何気なく言った要の言葉に、胸がぎゅっと締め付けられた。
「いやいや、まだまだや。でも頑張るわ」
照れたように笑う将大の背後で、「あれっ、ショータ!」と甲高い声が響いた。
露出の多い服で全身を固めた、派手な一団が突進してくる。
最初のコメントを投稿しよう!