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「バンドのファンの子らや」
「来てくれたん」と愛想よく手を振り、こちらを向いた。
「二人とも、今日はほんまありがとう。そうや、これ」
ポケットを探って幾つか飴玉を取り出すと、私と要にくれた。
「じゃ、俺たち帰ります」
「悪いけど、典ちゃんを頼んだで」
「責任もって、送り届けますよ」
手を振って別れた後、早速飴を口に放り込んで要が言った。
「大阪のギャルって怖いよね。なんか、人の心に土足で踏み込んで好き放題騒いだ上に、ゴミを散らかしたまま帰りそう」
私の気持ちを思いやってか、ぶるっと身震いまでしてみせた。
「典ちゃんがあんな服着たら、将大さん目の色変えて怒るよ、きっと」
将大がくれたパインアメをバッグにしまう。
「そうかな。大人に見えるんだったら、あんな服、着てみようかな」
胸の中のもやもやを吐き出すように言った。
五年の歳の差は、一体いつになれば埋まるのだろう。『妹』でいる限り、本当に望むものはもらえない。
「大人に見えるというより、寒いのか暑いのか分かんない感じがするね。やめときな」
そして歌うように付け加えた。
「典ちゃんは、自分が好きな服を着ればいいんだよ」
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