ベタ雪は繋がりたい

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 二度目は、おととし。一会町で、珍しく大雪が降った日。  フィジカル激ツヨ霊能者・榊幽玄が、郷土資料館周りと駐車場の雪かきを手伝ってくれた。お礼に晩御飯に連れて行った時だ。  お礼、とは言ったが、雪に不慣れな他の職員たちに代わり幽玄と共に雪かきした、青瀬の方が疲れていた。あの時も、大粒の雪が降ってきて。 『疲れたよね』 『もう休もう』  休みたい、と思ったその時。  青瀬の目の前で、幽玄が何かを掴んだ。 「センセ、見えますか」  幽玄の手の中で牡丹雪が溶け、だが何か白っぽいものがモゾッと動く。 「弱いけど、こういうのはタチが悪いんです」  霊能者がそれを潰すと、声はしなくなった。 「雪に紛れて取り憑き、凍らせようとしてくる。耳を貸しちゃダメですよ」 ※※※  一度目も、二度目も、偶然助けられた。  だが今回は。 『寂しいね』  周りには誰もいないし、玉環の家までまだ距離がある。 『つながろう』  また誰かが助けてくれる、と期待も出来ない。 『一緒にいようよ』  三度目。三度目なのだから。 「悪いね」  寒い中、どうにか笑顔を作り、呟く。 「一緒にはならないよ。僕は、今の暮らしが好きなんだ」  声が、止んだ。  ふう、と大きく息をつく。肩にかかる雪をほろい、歩き出した。 ※※※  そのとき榊幽玄は、つまみ食いしようとする玉環から鍋を守っていたが、引き戸が開く音で玄関に飛んで行った。 「おかえりなさいセンセ、うわ! また雪ですか」 「ただいま」  頭やコートの雪を丁寧に落として、家に入る。 「このぶんだと、食後は雪かきだねえ」 「えー」  幽玄は嫌そうな顔をしたが、青瀬は朗らかだった。  言えた。やっと言えた。  寂しいことも、嫌になることもある。そして疲れ果てる。これはもう、変えられないだろう。  でもやっと、自分で、自分を救うことが出来た。今まで誰かに救ってもらえたように。 「センセ早く、じいさんが肉ぜんぶ食っちゃう」 「小僧の分くらいは残っとる」 「俺の分も残しとけよ!」 「ああ、いい匂い。榊くん、ご飯ありがとうね」 一触即発だが暖かな居間に、青瀬は笑顔で入って行った。 (了)
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