ウタカタ 第1話

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 隣の体温がベッドから抜け出す気配がして、貴島はまだ半分まどろんだままでその手を掴んだ。 「……大地さん、起こしてしまいましたか?」  答える佐木の声は少し掠れていた。返事をするのが億劫で、貴島はそのまま掴んだ手を引く。 「……わっ」  バランスを崩した体を、手繰り寄せて抱き込む。 「ちょ……大地さん」  腕の中の体は、焦りつつも抵抗することなく貴島の抱き枕になる。落ち着く位置に抱き込んで、貴島が寝直す体勢に入ると、佐木は身をよじって向き合う形になった。 「大地さん、離して下さい」  困ったような声が柔らかく促す。 「まだ時間早ぇだろ?」 「はい、まだ平気です。大地さんは眠っていて下さい」  昨夜は久し振りに日付が変わる前に帰宅することができた。だからと言って佐木を伴い部屋へ帰りついたあと、その時間を日頃の睡眠不足を補う為に充てる……なんて使い方はしなかった。 「お前は?」 「俺は朝食作ってきます」 「スタジオ行く前にどっかで食ってきゃいいだろ」 「いけませんよ。大地さん、ここのところ外食が続いているでしょう?」  外食ならまだしも、移動中しか食事を済ませる時間が取れず、車中でコンビニおにぎりもザラだった。 「打ち上げの飲み会も続いてましたし、摂れる時にきちんとした食事を摂っておかないと」 「お前のメシは美味いんだけどな……」  言いながら貴島は、佐木の裸の背に手を滑らせる。
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