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隣の体温がベッドから抜け出す気配がして、貴島はまだ半分まどろんだままでその手を掴んだ。
「……大地さん、起こしてしまいましたか?」
答える佐木の声は少し掠れていた。返事をするのが億劫で、貴島はそのまま掴んだ手を引く。
「……わっ」
バランスを崩した体を、手繰り寄せて抱き込む。
「ちょ……大地さん」
腕の中の体は、焦りつつも抵抗することなく貴島の抱き枕になる。落ち着く位置に抱き込んで、貴島が寝直す体勢に入ると、佐木は身をよじって向き合う形になった。
「大地さん、離して下さい」
困ったような声が柔らかく促す。
「まだ時間早ぇだろ?」
「はい、まだ平気です。大地さんは眠っていて下さい」
昨夜は久し振りに日付が変わる前に帰宅することができた。だからと言って佐木を伴い部屋へ帰りついたあと、その時間を日頃の睡眠不足を補う為に充てる……なんて使い方はしなかった。
「お前は?」
「俺は朝食作ってきます」
「スタジオ行く前にどっかで食ってきゃいいだろ」
「いけませんよ。大地さん、ここのところ外食が続いているでしょう?」
外食ならまだしも、移動中しか食事を済ませる時間が取れず、車中でコンビニおにぎりもザラだった。
「打ち上げの飲み会も続いてましたし、摂れる時にきちんとした食事を摂っておかないと」
「お前のメシは美味いんだけどな……」
言いながら貴島は、佐木の裸の背に手を滑らせる。
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