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「っ……大地さん、駄目です……」
びくりと体を揺らした佐木は、貴島から逃れるように慌てて身を起こした。そして貴島の指先を捕らえて悪戯できないように封じる。
「来週は久々にお休みがありますから、それまであと少し頑張って下さいね」
佐木はほんのり赤らんだ顔でふんわり笑う。取り立てて目を引く容姿ではないけれど、よく見るとパーツの一つひとつは形がいい。控えめで温厚な性格が反映された佐木の顔。優しい色を湛えた澄んだ瞳は、ずっと見ていたくなるような不思議な魅力がある。
佐木は握っていた貴島の指にきゅっと力を込めてから、手を離した。
「ご飯ができたら起こしますから、もう少し眠っていて下さい」
佐木はベッドを抜け出て、床に散っていた衣服を集めて身に着ける。
「シャワーお借りします」
貴島の衣類も回収して手早く畳みベッドの端に置くと、佐木は部屋の扉へと向かった。その後姿を見ていると、ふと右足に目がいく。佐木が着ているズボンの裾。余った部分を折り曲げていた箇所が、片方だけ取れて床を引き摺っている。
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