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翌朝、リビングへ足を踏み入れるとエプロン姿の佐木が笑顔を見せる。
「あ、大地さんおはようございます。今起こしにいこうと思っていたところです」
貴島はそれに返事をしてテーブルに着く。テーブルの上にはオープンサンドとシーザーサラダが並べられていた。
「洋食とか珍しいな」
というより初めてかもしれない。佐木が作る料理は今まで、朝食に限らずすべて和食だった。
「……ごめんなさい、和食の方が良かったですか?」
貴島の呟きに佐木は申し訳なさそうな顔を見せる。
「いや、美味そう」
答えると、佐木は即座にほっとしたような表情になった。
「これ、宜しかったら先に召し上がって下さい」
佐木は貴島の目の前に野菜ジュースを置いた。昨夜の酒が残っているのか、軽い頭痛と、胸に少しの不快感がある。それが和らぎそうな気がして、貴島は言われるままグラスに手を伸ばした。
「お、美味ぇ」
口当たりの良さに思わず感嘆の声を上げる。緑色の液体はどろりとしていて見るからに苦そうなのに、フルーツが入っているのか爽やかな甘味がするりと喉を通っていく。
「本当ですか? 良かった」
貴島の言葉に佐木は嬉しそうに笑って、空になったグラスにミキサーの中身をつぎ足す。
「京野菜で作ったジュースなんです。昨日大型のスーパーに行ったら産地直送の野菜が売っていて。栄養価も高いそうなので、お口に合ったなら良かったです」
心底嬉しそうに笑う佐木に、貴島の胸が少しだけ軋んだ。
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